大陸の北方に位置する、東西約1.5km、南北3kmほどの歪んだ卵形をした町。北には徘徊者によって奪われ尽くした文化文明や自然物の残り滓、その見た目から〈石英〉と呼ばれる半透明の無機物の柱が立ち並ぶ、〈石英の森〉が広がっている。
町のほとんどは住宅地で、僅かな商業施設は町の中心部である中央広場付近に集中している。中央広場の中心には、町のシンボルにもなっている時計塔がある。
一方町の最北端には全高25mの見張り櫓があり、昼夜問わず徘徊者の襲来を監視し続けている。
住人数は五千人弱、平均年齢は七十代後半。
かつて人口五万人を超えていた町の建物のほとんど、特に中央広場から北——つまり黒錐門により近い側の住居は、空き家ばかりとなっている。